インド旅行記 だまされずに安宿街パハールガンジへいけるのか

 

バックパッカーに憧れて

 

5月27日〜6月14日までの19日間、インドに行ってきた。

 

 

なぜインドだったのかを一言で表すならば、「思うがままに海外旅行をしたかったから」である。

 

今まで行ったことのある外国は、アメリカとヨーロッパ諸国とオーストラリア。アメリカは大学を通した留学、ヨーロッパとオーストラリアは日本の旅行代理店に宿と交通手段をアレンジしてもらったツアーだった。学生時代はせっかく海外にいくのだから色々見たいという気持ちが強く、綿密に計画を立てて効率的にチェックポイントを回るような旅行をしていた。

 

 

バックパッカーもいいな。と思ったのは友人のシミの影響が大きい。

 

シミは旅する漫画家として世界各国を約3年間旅していた男だ。彼は漫画を書く以外に歌を唄いお金を稼いだり、時には野宿したりと「バックパッカーかくありけり」の王道をまっすぐと歩いていた。その様子をブログで読んでいて、「予定調和ではない旅を楽しめたら人生楽しそうだな」と思った。

 

 

インドに呼ばれて

 

インドに決めたのは呼ばれていたからだ。

期限が決まっていなければ沢木耕太郎著「深夜特急」のようにまずは香港に入り、あとは適当にぶらぶらするなんてのもよかった。しかし、幸いなことに次の仕事が決まっていたので海外にいけるのは約20日ほどだった。

 

20日間ならばインドだ。インドしかない。友人たちが口をそろえて「もう1度行きたい」という国、インド。

最低1ヶ月は身を浸さないと良さがわからないと言われるインド。

 

 

谷根千の料理屋「檸檬の実」に行った時に、インドの各地に伝わるクラフトを紹介する「a Taste of India」の展覧会が開催されていたこと。そこで見たカンタ(刺し子)スカートから縫っている女性の手がありありと脳内に浮かんできたこと。

インドを巡りカレーの作り方を学んだ鈴木夫妻が「砂の岬」を開業するまでの道のりを書いた「不器用なカレー食堂」を読んだこと。会社に退職をする旨を上司に告げた最初の週末、神保町の古本屋で「インド・ノート」という本を見つけたこと。同じ日に、絶版になっていたTRANSIT「永久保存版! 美しきインドに呼ばれて」を見つけたこと。

 

 

インドに呼ばれたと感じるには充分だった。

 

 

最終出社日、同期にインドに行くことを話したら「バックパッカーなんて学生時代にすませておけよ」と言われてしまい、うなずくことしかできなかった。そうだ、時間のある学生時代にやっておくべきだったかもしれない。ただ、学生時代には他にやりたいことがあったんだ。それに、仕事をやめたタイミングでインドにいくことに意味がある。

 

 

あ、嘘ついてる!!!

 

デリーにあるインディラ・ガンディー国際空港を出て最初に感じたのは、意外と暑くないということだった。5月〜6月のインドは乾季に当たる。平均気温は35℃を越え、砂漠地帯のラージャスターン地方では40℃を示すこともある。

 

ただ、どうやら日本と違い湿度があまりないようでさっぱりとしている。曇っているからか日差しもなく、日本の夏よりは過ごしやすいように思われた。

 

 

空港から首都のニューデリーへはメトロに乗って約30分ほど。空港はきれいに整備されており、あまりインドにきたという実感が湧かなかったが、メトロから見える荒野に浮かぶ太陽は日本でみたことがないほど大きくメラメラとあかね色をたたえていた。

 

メトロを降りて出口を探しているうちに日が沈んでしまったらしい。厚い雲に覆われニューデリーの街は灰色に染まっていた。目指すはデリーの安宿街パハールガンジ。まずは宿を探さなければ。

 

 

ニューデリーのメトロからパハールガンジに向かうのは少し難しい。メトロの出口を抜けたら向かいのインド鉄道駅まで歩き、その後荷物検査を通過しホームの上にかかる橋を渡らなければならない。インドの鉄道ではチケットを持っていなくてもホームに入ることができるのだが、荷物検査はどこの駅に行っても必ず受けなければいけない。

 

 

 

日本では切符がないとホームにいけないし、インドの荷物検査(警備員が厳しい顔でチェックしている)が改札のように感じられてはじめてインドにきた人はキョロキョロしてしまうようだ。騙そうとしてくる人は「チケットがないとホームに上がれないよ」などと荷物検査機の前でいい、旅行代理店に連れて行き法外な値段のツアーを組ませてくる。

 

 

まずは真実を言い、信用させてから嘘をいう

 

僕もメトロの出口で例にもれず声をかけられた。

「ハロー!アーユーチャイニー?」

 

地図を見ようとスマホを取り出した瞬間声をかけてくるなんてと苦笑いしながら顔をあげる。目の前にはひょろりとした見た目に薄汚れた青いシャツを着たいかにも胡散臭そうなヤツが立っていた。

 

 

どこに行くんだいと聞かれたので、パハールガンジだと答えると、ついてこいと言う。

 

怪しい。

 

鉄道駅までは話をしながら一緒に歩いた。話をしても警戒心はとけず、鉄道駅から先は一人でいくよと伝える。すると

「じゃあ、そこの荷物検査を通過して階段を登るんだよ」

と教えてくれた。なんだ、いい人じゃん。

 

お礼をいい、すぐには荷物検査をせずにぶらぶらする。鉄道を待っている間インド人は本当に床で寝てるんだなあ。すごい。

 

写真を撮っているとまた声をかけられた。振り向くと青いシャツのあいつ。

「おい、荷物検査はあそこだって。しょうがないなあ、一緒に行ってあげるよ」

 

なぜか案内しようとする青シャツ。親切だなあとついて行って階段を上がる。すると、青シャツは得意げな顔をしながら浅黒い指を立てこう言った。

 

「パハールガンジはあっちだ」

 

指さす方向は橋とは真逆。EXITと書いてある。先にはメトロの駅が見える。

 

あ、嘘つきだ!!

 

「そんなわけないだろ、メトロの駅から俺は来たんだぞ」

「いや、君はまちがっている。俺についてこい!」

と言い合いになる。Google mapを見てもやはり橋の向こうがパハールガンジだ。

 

ありがとう、インドのホームが見たいんだ、それじゃ!」

と言い残し、立ちふさがる青シャツを突破する。しばらく歩くと、パハールガンジを指ししめす標識が出てきた。矢印はメトロの駅の反対を向いていた。

 

まずは本当のことを言って信用させてだまそうとするのか。でもいまはネットの時代、調べれば正しい情報なんていくらでも出てくるんだぜ。

 

翌日、インド初心者が最初につまずく関門を突破して調子に乗っていた僕はまんまとだまされてしまう。

 

 

 - たずねる